課題
対象の業態は複数店舗を運営しており、取引先に対して新規出店や物販などで契約に沿った販売促進費を請求するという仕組みがありました。今回フォーカスする業務は、取引先からの販売促進費の提出・請求の管理業務についてです。
これまでは提出用のフォーマットを用意しており、販売促進費に該当する取引を「確認書」として提出してもらっていました。社内担当者は月末になると、メールなどに添付されたExcelや専用書式の書類を確認しながら、kintoneや社内システムへ手入力で転記していました。また、以下のような課題も重なっていました。
- 取引先ごとに利用しているファイル形式や授受方法がバラバラで、確認に時間がかかる
- 確認・承認状況や進捗などのデータ管理に懸念があった
- 会計システムへの連携は、担当者が手動で1件ずつ転記入力をしていた
こうした状況を受け、業務担当者・経理部門・取引先の三者が関わる業務フローを、kintoneを基盤に一から整理・デジタル化することになりました。
(図:導入前と導入後の業務フロー比較イメージ)

実行内容・取り組んだこと
全体構成
kintoneを中心に、以下の3つのツールを組み合わせたシステムを構築しました。
- kintone ── 取引先の契約情報管理・社内承認・費用実績の確認・締め処理・CSV出力
- FormBridge(トヨクモ製品) ── 取引先担当者が実績データを入力・提出するフォーム
- kViewer(トヨクモ製品) ── 取引先担当者が自社の契約情報や提出済みデータを閲覧するポータル
kintoneアカウントを持たない取引先の担当者に対しても、FormBridgeとkViewerを活用することで、メールアドレス認証によるセキュアなアクセスを実現しています。取引先は自社に関連するデータのみ閲覧・入力でき、他社の情報は見えない設計です。
(図:kintone・kViewer・FormBridgeの関連図)

4ステップの業務フロー
Step 1 ── 契約情報の登録・承認(kintone)
取引先ごとの費用条件(費用タイプ・掛率・商品コードなど)を社内担当者がkintoneに登録します。登録後は部門長・経理責任者など複数人によるプロセス管理(多段階承認)を経て内容を確定させます。承認が完了するとマスタアプリへの自動反映が走り、取引先側のkViewerに最新の契約情報が反映されます。会計ソフトに紐づけるための基本情報として整備しました。
Step 2 ── 費用実績の提出(FormBridge × kViewer)
取引先の担当者はkViewerにメールアドレスでログインし、自社の契約情報一覧を確認します。詳細画面から「新規作成」ボタンを押すと、契約情報があらかじめセットされた状態でFormBridgeのフォームが開きます。担当者はそこで当月の実績データ(日付・店舗名・取引先名・金額)を入力・提出します。
実績データが多い場合は、Excelファイルをそのままフォームへアップロードしてデータを一括取込することも可能です(JSカスタマイズで実現)。提出後は「提出済み」のステータスに変わり、フォームからの再編集はできなくなります。
Step 3 ── 内容確認(kintone)
社内の業務担当部門・経理部門が、提出された確認書の内容と添付された証憑書類(領収書・請求書などのPDF)を照合します。kintoneのレコード画面上でPDFをフローティングウィンドウ形式でプレビューできるカスタマイズを実装しており、別タブを開いて往復する手間なく目視確認が行えます。
Step 4 ── 締め処理とCSV出力(kintone)
月次の締日になったら、対象レコードをまとめて締め処理します。締め処理が完了すると、会計システムが読み込めるCSV形式でデータを出力できます。締め処理済みのレコードは社内ユーザーも含めて編集が完全にロックされます。誤って締め処理をした場合や一部だけ戻したい場合のために「部分締め戻し」機能も備えており、柔軟な運用に対応しています。
(図:業務全体フロー図 Step1〜Step4)

実施ポイント
① 承認完了をトリガーにしたマスタの自動更新
既存のマスタアプリを活用するために、契約内容の承認が完了したタイミングでJavaScriptカスタマイズによりマスタアプリのデータを自動更新する仕組みを実装しました。テーブルの契約情報をkViewer側で参照可能にするための実装です。プロセス(承認完了)をトリガーにすることで、操作ユーザーはToyokumo側との連携を意識せずに運用できるようにしています。また、エラー発生時や緊急の変更に対応するため、ボタン一つで強制的に同期をかけられる「手動反映」の機能も用意しました。
② kintoneアカウント不要のセキュアなアクセス制御
取引先の担当者はkintoneアカウントを持っていないため、Toyokumo KintoneApp認証を使いメールアドレスによるログインを実現しています。事前登録されたメールアドレスのみアクセスを許可し、退職・異動・契約終了時は「無効」フラグを切り替えるだけでアクセスを即時停止できます。
③ FormBridgeへのExcel一括取込機能
FormBridgeには公式のテーブル行追加APIがないため、JavaScriptで「行追加ボタンを疑似クリックする」という方法で必要行数を確保し、SheetJSライブラリでExcelの内容を読み取ってテーブルに反映しています。取込前には日付形式・数値・空欄のチェックを自動で行い、不備があれば行番号付きでエラーを通知します。
④ PDFのフローティングプレビュー
証憑PDFの確認作業を効率化するため、kintoneのレコード画面上にPDFをフローティングウィンドウで表示するカスタマイズを実装しました。ウィンドウはドラッグ移動・リサイズに対応し、複数のPDFを同時に開いて並べて確認することもできます。ブラウザ内で完結する処理としており、確認作業のための不要なファイルダウンロードを削減しています。
⑤ 二段階の編集ロック設計
「提出ロック(提出後は取引先から編集不可)」「締めロック(締め処理後は全ユーザーが編集不可)」という二段階の編集制限を設けました。段階を追うごとに制限が強まる設計にすることで、データの改ざん防止・確認フェーズの分離による運用を両立しています。
⑥ 会計システム専用のCSV出力機能の実装
締め処理済みのレコードから、会計システムが読み込める専用フォーマットのCSVをワンクリックで出力できる機能をJavaScriptカスタマイズで実装しました。会計システムの取込形式に合わせて定義しており、担当者が手動で加工する必要がありません。
まとめ・効果
このシステムの構築により、毎月の費用精算業務において以下の変化を見込んでいます。
- 取引先からの実績データ収集が、メール・Excelのやり取りからフォーム提出に統一される
- 「誰が・いつ確認・承認したか」がkintone上の記録として自動的に残るようになる
- 自社と取引先が同じ情報を共有できる
- 証憑PDFの確認がkintoneのレコード画面内で完結し、画面の往復操作が削減される
- 締め処理後に会計システムへのCSV連携が可能になる
- データの多重管理や転記ミスのリスクが低減される
今回の対応では「取引先との外部データ授受」「社内承認フロー」「会計システム連携」という三つの領域をkintone上で一体化させることが最大のポイントでした。それぞれに個別の課題があるなかで、kintone・FormBridge・kViewerの役割を明確に分担することで、無理な実装をせずに要件を実現できました。
類似の業務フロー(外部パートナーからデータを収集し、社内で確認・会計処理につなぐ)を抱えている事業会社にとって、そのまま応用できる設計ノウハウが多数含まれるものになります。
各機能の詳細記事
※近日公開予定
- 記事② ── kintoneのプロセス管理完了をトリガーに別アプリのマスタを自動更新した事例
- 記事③ ── FormBridgeにExcel一括取込ボタンをJSカスタマイズで追加した事例
- 記事④ ── kViewerの詳細画面でステータスに応じて編集ボタンを制御したカスタマイズ事例
- 記事⑤ ── kintoneのレコード画面上でPDFをフローティングウィンドウ表示するカスタマイズを作った話
- 記事⑥ ── kintone × 外部サービス連携で複雑な業務フローを構築する際の設計ポイント5選









